第15章 頭の中は橘結衣のことでいっぱい

夜。橘家の食卓には、どこか薄気味悪い空気が漂っていた。

橘元太は顔を強張らせたまま、ひと言も発しない。食事の途中、橘晴美が何度呼びかけても、魂が抜けたみたいにぼんやりして、返事が遅れるばかりだった。

橘由樹は由樹で、これまた様子がおかしい。目の縁が赤い。何に腹を立てているのか、自分でもうまく言えないといった顔だ。

そんな中で、橘結衣だけは妙によく食べていた。大口でご飯をかき込みながら、もっともらしく言う。

「この煮物、味が薄い。こっちは肉が筋っぽさ足りない」

台所に向けて、ひとつひとつ気になる点を書き留めさせる始末。

以前の――恥ずかしがって箸を伸ばすのもためらっていた姿とは、ま...

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